M&Aや不動産投資等で企業価値を算定する際の主要なツールであるDCF法によるバリュエーションを、実際に投資銀行で使うレベルの本格的なエクセル付きで解説します。
解説していく具体的な流れとしては以下の通りです。

カテゴリー 内容
1 前提 DCF法の学習にあたって
2 オペレーティングモデル オペレーティングモデルの概要と流れの解説
3 1.エクセルの反復計算をオフにする
4 2.損益計算書(IS)を構築する(ただし、減価償却、受取・支払利息は空欄のまま)
5 3.設備投資や資本等(mixed account)と運転資本を計算し、減価償却をISにリンクさせる
6 4.負債の返済スケジュールと受取・支払利息を計算する(※計算した利息はまだISにはリンクさせない)
7 5.貸借対照表(BS)を構築する(ただし、現金と短期借入金は除く)
8 6.BSの各項目をキャッシュフロー計算書(CF)の項目毎(営業、投資、財務)に分類する(ただし、現金と短期借入金は除く)
9 7.CFを構築する
10 8.CFで算出した現金/短期借入金をBSにリンクさせる(この時点でBSの資産と負債・資本がバランス)
11 9.受取・支払利息をISにリンクさせる(これにより循環参照が発生します)
10.エクセルの反復計算をオンにする
12 11.循環参照のオン・オフができるスイッチを構築する
12.構築したモデルをチェックする
13 将来価値を現在価値に割り引く 企業の現在価値を計算する方法の流れを解説
14 1.アンレバード・フリー・キャッシュフロー(FCF)を計算する
15 2.WACCを計算する
16 3.WACCを元に各年の割引率を計算
17 4.FCFとターミナル・バリューを現在価値に変換し、企業価値(EV、Enterprise Value)を計算
18 5.企業価値(EV)から株式価値を計算

簡素なDCF法のエクセルや解説はネット上にたくさんありますが、仕事で使えるレベルの本格的なDCF法を学びたい方は必見です。

DCF法は多くの人に役立つ知識

DCF法を使ってできること

まず前提の部分からお伝えしていきます。
DCF法を覚えると何ができるようになるのでしょうか?

一言でいえば、企業やプロジェクト、投資案件などの本質的な価値を計算できるようになるということです。
企業価値を計算する方法には、同業他社との比較で計算する方法(類似企業比較法)など他の手法もあります。

しかし、対象企業の収益やコストなどの将来予測を分析して企業価値を算出するという方法の中では、DCF法が最も一般的となっております。

DCF法が役立つ仕事

次に、DCF法は誰に役立つでしょうか?

  1. 投資銀行で働く方
  2. 資産運用会社で働く方
  3. 株式リサーチアナリスト
  4. PEファンドで働く方
  5. 商業銀行の融資・審査担当者
  6. 企業で経営企画や事業開発、M&Aを担当されている方
  7. その他金融業界で働く方
  8. 金融業界を志望する学生

上記の1~4の方々は、DCF法を含む企業価値の計算(=バリュエーション)を主たる仕事の1つとして使用している方々ですので、役立つのは当然です。
しかし、これらの方以外にも、DCF法を覚えることで仕事の役に立つと思われる方はたくさんいます。

商業銀行の融資担当者で、融資の相談には乗れるけど、もっと幅広く取引先からの相談に乗れるようになりたいと考えている方はいませんか?
DCF法を勉強すれば、取引先の財務諸表を理解するために必要な情報とその使い方を理解することができます。
それが理解できれば、取引先の強みや弱みが見えてきて、これまでとは違った観点からの提案ができるかもしれません。

また、企業で経営企画を担当されている方で、投資案件やM&Aに携わった経験がある方はたくさんいると思います。
その際、投資判断の社内説明で苦労された経験はありませんか?
このサイトでは、DCF法の解説だけでなく、M&AによるEPS(一株当たり純利益)へのインパクトや、投資の資金調達手段によってそのインパクトがどう変わるかについても解説しています。
投資インパクトの計算についてより深い理解ができるようになり、社内の説明資料の説得力が増すことが期待できます。

エクセルを見れば学習効果は絶大

理論と実践は別物―いくら本を読んでもDCF法は計算できるようにならない

私がDCF法を含む企業価値の算定手法について勉強していた頃、書籍やネット検索で理論は理解できましたが、自分で計算するとなるとやり方がわからず途方に暮れていました。
いくつものセミナーにも出席しましたが、そんな中で一番役立ったのが、実際にエクセルでモデリングをする方法を見せてくれる講座でした。

なぜ、エクセルを見ることが学習に役立つのでしょうか?

それは、DCF法をエクセルで計算するためには、決まったルールやテクニックがあり、それを知らなければ学習した理論をエクセルで表現できないからです。
言い換えれば、DCFの実践は「DCF法理論の理解」と「理論を組み込むエクセルスキル」の2つが必要なのです。

このサイトで公開する2つのエクセル

このサイトでは、投資銀行で実際に使われているDCF法によるバリュエーションのモデルを公開しながら、エクセルによるモデリングの手法を解説します。
公開しているモデルは、2つのパターンを用意しています。

公開している2つのモデル

  • 【課題】:モデリングに必要な最低限の財務実績値や前提だけが入力されているモデル
  • 【解答】:全ての数式が組まれている完成したモデル

DCF法のモデリングについて知識と経験がある方は、【課題】を使って、私の解説を見ながら自分でモデルを構築していき、【解答】と見比べて答え合わせをするという方法を行うことで、より実践的なモデリング練習ができます。

DCF法のモデリングについての経験が多くない方や、あまり時間をかけずに読み進めたいという方は【解答】だけを見ながら解説を読むという方法でもよいと思います。
より学習効果を高めるためには、【解答】だけを見ながら解説を一通り読んだ後に、復習として【課題】を使って同じモデルを構築するというやり方がよいと思います。

ちなみに、この壁道式DCFをマスターすれば、ウォールストリート(壁の道)の投資銀行にアナリストとして合格できる程度のスキルが身につきます。
実際、このサイトで提供しているエクセルは、私自身が米国の投資銀行で働く際の面接で使われたケースも念頭に置きながら作成しています。

エクセルのダウンロード

以下のリンクから、【課題】と【解答】の2つのエクセルをダウンロードしてください。次回から、このエクセルを使って実際のモデリングの方法を解説していきます。