DCF法による企業価値算定を行うには、企業の将来予測を立てる必要があります。
今回解説するオペレーティングモデルは、DCF法に適した企業の業績予測モデルです。
これを覚えると様々なシミュレーションが可能になるので、DCFに限らず多様な用途に応用できます。
オペレーティングモデルとは、DCFに必要不可欠な財務予測モデル
オペレーティングモデル作成がDCF法の最初のステップ
DCF法による企業価値の算定(バリュエーション)は、企業の将来の業績からもたらされる利益(インカム)を現在の価値に割り引いて算出します。
そのため、インカムアプローチとも呼ばれています。
このDCF法の計算プロセスは主に、以下の2つです。
- 企業の業績予想(オペレーティングモデル)を作成する(=インカムを予測する)
- オペレーティングモデルから算出された将来のキャッシュフローを現在価値に割り引く(=インカムを現在価値に変換する)
このように、オペレーティングモデルを作ることは、DCF法の最初のステップとなります。
オペレーティングモデルに必要な企業の業績予想の入手方法
オペレーティングモデルを作成するために必要な企業の業績予想は、上場会社であれば中期計画等が公表されています。
また、投資・融資先の企業であれば経営者から資料をもらったり、ヒアリングをして入手したりすることもあると思います。
このように入手した情報というのは、売上と利益の目標だけの場合もあれば、コストの詳細な見積もりまである場合もあると思います。
これらの情報を用いつつ、情報がない部分は予測や推測を用いて、企業価値の算定という目的に合わせた形で企業の業績予想を行うというのがオペレーティングモデルです。
なお、私が解説1で公開したエクセルは、①のオペレーティングモデルの部分となります。
②の現在価値への変換については、オペレーティングモデルの解説が終わった後に、別途公開します。
もし、エクセルのダウンロードがまだの方は、以下からダウンロードしてください。
オペレーティングモデル構築のための12のステップ
オペレーティングモデルの構築には、決まった12のステップがあります。
このステップに従うことが、計算ミスやモデルの不具合発生のリスクを減らしますので、オペレーティングモデルを構築する際には繰り返し参照してもらえるといいと思います。
オペレーティングモデル構築12のステップ
- エクセルの反復計算をオフにする
- 損益計算書(IS)を構築する(ただし、減価償却、受取・支払利息は空欄のまま)
- 設備投資や資本等(mixed account)と運転資本を計算し、減価償却をISにリンクさせる
- 負債の返済スケジュールと受取・支払利息を計算する(※計算した利息はまだISにはリンクさせない)
- 貸借対照表(BS)を構築する(ただし、現金と短期借入金は除く)
- BSの各項目をキャッシュフロー計算書(CF)の項目毎(営業、投資、財務)に分類する(ただし、現金と短期借入金は除く)
- CFを構築する
- CFで算出した現金/短期借入金をBSにリンクさせる(この時点でBSの資産と負債・資本がバランス)
- 受取・支払利息をISにリンクさせる(これにより循環参照が発生します)
- エクセルの反復計算をオンにする
- 循環参照のオン・オフができるスイッチを構築する
- 構築したモデルをチェックする
今の段階では、1つ1つのステップが何を意味しているか理解できていなくて当然ですし、全く問題ありません。
私が一番最初にこの12ステップを書き出した理由は、皆さんがオペレーティングモデルの構築方法を学んだ後に、自分でモデルを構築することになった際に参照できたら便利だと思ったからです。
それでは、次回から1つ1つのステップを見ていきましょう。
エクセルをダウンロードしてない方は、ダウンロードページからダウンロードしてください。