M&Aモデル構築のステップ5では、各種スイッチとケースを作成していきます。それぞれのスイッチやケースを設定することのメリットや作り方のコツを中心に説明します。
ステップ5:循環参照・リファイナンス・シナジーのスイッチ と、業績・ファイナンスのケースを作成する
それぞれのスイッチの意味と作り方を理解する
循環参照スイッチについては、DCFモデルで解説済なので、以下のリンクを参照してください。
投資銀行の本格的DCF~エクセル付きで企業価値評価を解説12
リファイナンススイッチとは、M&Aにおいて、買収した企業が抱える負債を買収する側の企業が借換えするかを切り替えるためのスイッチです。買収する側が財務健全な大企業で、買収される側が財務体質の脆弱な企業である場合、借り換えた方が金利が低下することから借換えを行うことが多いですが、リファイナンスするかはケースバイケースなので、その有無によってどのような影響がでるかをシミュレーションできるように、予めスイッチを作っておきます。
ここでは、循環参照スイッチと同様にドロップダウンリストを作成するとともに、セルの名前をrefiとしておくことで、後々このスイッチを数式に組み込みやすくしておきます。
シナジースイッチは、業績予想にシナジーを織り込むかどうかを切り替えるスイッチです。シナジーがない状態との比較を瞬時にできるようにしておくことはモデリングにおいて便利なので、このスイッチも作っておくことをお勧めします。作り方は他のスイッチと同様で、セルの名前はsynとしておきます。
業績ケースとファイナンスケースの意味と作り方を理解する
業績ケースの作り方については、DCFモデルで解説済ですので、以下のリンクを参照してください。
業績ケースは、買収する側とされる側両方の企業について作っておいた方が、シミュレーションの柔軟性が上がると思います。
ファイナンスケースというのは、買収資金の調達方法について、株式発行と現金・負債による調達の比率を変動させるためのものです。M&AモデルはLBOモデルと異なり、負債をできるだけ多く使うとは限らないので、複数のファイナンスケースを用意しておき、シミュレーションできるようにしておくと後々便利です。
モデルをみていただくとわかりますが、業績ケースとファイナンスケースについても、それぞれセルに名前をつけています。こうすることで、後でセルを参照する際に効率的になります。
スイッチやケースは1つの場所にまとめておくと便利
詳細にモデルを組んでいくと、様々なシナリオを用意することが多々あります。そのような場合には、スイッチやケースは1つの場所にまとめておく方がよいと思います。スイッチやケースが複数のシートに分かれていると、どのようなスイッチを作ったが他人にわかりづらいだけでなく、シミュレーションを行う際も余計にシート間を移動しなければならなくなります。
財務モデリングはどれだけ単純化しようとしても限界があり、そもそもとして複雑に数式を組み込んでいくことになるため、スイッチやケースを1つの場所にまとめておくといった少しの工夫でも、全体の見やすさが向上し、ミスの減少にもつながります。
このサイトのモデルでは、いかのように1つの場所に表示しています。