今回から、LBOモデル構築の解説に入ります。一見複雑に見えるLBOモデルも、1つ1つのステップを分解して見ていけば、誰でも理解できるようになります。まずは、LBOモデル構築のステップを見ていくことにしましょう。
LBOモデル構築18のステップを知る
LBOモデル構築にはキャッシュ・スイープモデルの知識が必要
これから解説するLBOモデルは、バイアウトファンドやや投資銀行などで主に使われるモデルです。前回解説したように、LBOは負債を用いる(=レバレッジをかける)ことで、少ない資本で大きな買収を行います。
買収後は、買収した会社から出てくる収益を負債の返済に回すことになるのですが、この資金の流れはキャッシュ・スイープ(Cash sweep、余剰資金強制弁済条項)モデルを使うことで組み込みます。
もし、まだキャッシュ・スイープモデルを理解していない場合は、先に下のリンクからキャッシュ・スイープモデルの解説を読んでから、LBOモデルの解説を読んでください。
LBOモデルのダウンロード
この解説を読む際は、下のリンクからLBOモデルをダウンロードしてください。
LBOモデル構築18のステップ
LBOモデルは、財務3表を作成する部分はDCFと共通していますが、負債を用いて買収することでDCFとは異なる計算を行う部分がたくさんあります。完成したLBOモデルを見るだけでは、どういう順序でモデルを構築すればよいかがわかりにくいので、オペレーティング・モデル構築と同様に、最初にステップをお示しします。
~LBOモデル構築18のステップ~
- 買収価格と前提条件を設定する
- 株主構成を設定する
- のれん計算の項目を設定する
- 手数料と償却スケジュールを計算する
- 資金調達と資金使途(Sources & Uses)を作成する
- 買収直後のBSを試算する
- 損益計算書(IS)を構築する(ただし、減価償却、受取・支払利息は空欄のまま)
- 設備投資や資本等(mixed account)と運転資本を計算し、減価償却をISにリンクさせる
- バランスシートを(BS)を構築する(ただし、現金と有利子負債は空欄のまま)
- CFを構築し、負債返済に充当可能なキャッシュフローを計算するとともに、CFの期末現金をBSにリンクさせる(ただし、CFの有利子負債は空欄のまま)
- キャッシュ・スイープのついた負債の返済スケジュールと受取・支払利息を計算する
- 期末の負債残高をBSにリンクさせ、BSの負債残高前年比をCFにリンクさせる(この時点でBSの資産と負債がバランスします)
- 受取・支払利息をISにリンクさせる(これにより循環参照が発生します)
- エクセルの反復計算をオンにする
- 循環参照のオン・オフができるスイッチを構築する
- 安全性分析を行う
- 売却時のEnterprise value(EV)と株式価値を計算する
- 収益率と感応度の分析を行う
今の段階でこれらのステップの意味を理解できなくても、全く問題ありません。これから解説を読み進めていくにつれて、理解が深まっていくと思います。
ご自分でLBOモデルを構築する際には、慣れてきたら自分がやりやすい順番で構築してもよいと思いますが、重要なのはステップを明確にしておくことです。ステップを決めておかないと、間違いを起こしやすくなります。
では、次回からは、各ステップについて解説していきます。