投資銀行の本格的LBOモデル作成方法をエクセル付きで解説11

今回はキャッシュフロー計算書と負債の返済スケジュールを構築していきます。LBOモデルではEBITDAをベースにCFを構築する方が見やすさが向上するなど、LBOモデルに適した構築方法がありますので、このような特徴を中心に解説します。

ステップ10: CFを構築し、負債返済に充当可能なキャッシュフローを計算するとともに、CFの期末現金をBSにリンクさせる(ただし、CFの有利子負債は空欄のまま)

LBOモデルの営業キャッシュフローはEBITDAをベースにすると分かりやすい

キャッシュフロー計算書の作成方法は、キャッシュ・スイープ付きオペレーティングモデルのCFと似ていますが、1点異なる部分があります。それは、営業CFを計算する際、キャッシュ・スイープでは、当期純利益をベース(=スタート)にして、そこから非現金項目を足し引きして営業CFを算出していましたが、今回のLBOモデルではEBITDAをベースにしているという点です。

LBOモデルではEBITDAをベースにしなければならないということではありませんが、こうすることでLBO投資に伴うローンの支払利息をCF上で表示することができるのでわかりやすくなるというメリットがあります。

これがどういうことかを少し解説します。当期純利益は支払利息を差し引いた後の利益なので、CFを構築する際に当期純利益をベースにすると、支払利息はどこにも表示されません。一方、EBITDAは利息控除前の利益なので、EBITDAをベースにすると支払利息をCF計算上で表示することができます。

LBO投資は多額の負債を用いるので、支払利息も大きくなります。なので、CFを構築する際に支払利息を見えるようにしておいた方が、見やすさが向上すると思います。

なお、当期純利益でなくEBITDAをベースにすることで、ノンコア事業からの利益など営業CFの調整項目も増えますので、注意してください。

LBO-CF計算書

ステップ11:キャッシュ・スイープのついた負債の返済スケジュールと受取・支払利息を計算する

キャッシュ・スイープ付き返済スケジュールの作成方法はキャッシュ・スイープモデルと同じ

キャッシュ・スイープ付きの負債返済スケジュールの作成方法は以前解説したキャッシュ・スイープモデルと同じなので、ここでは異なる部分や私のLBOモデルにおける前提を中心に説明します。

私のモデルでは、タームローンA、タームローンB、ハイイールド債の3種類の負債を用いています。それぞれの返済期間はステップ4の手数料と償却スケジュールで設定しました。その際、ハイイールド債については10年と設定していましたが、このモデルでは236行目からの期限弁済にハイイールド債が含まれていません。これは、ハイイールド債は10年後に借換えを行うという前提を置いていることによるものです。

もちろん、ハイイールド債を借り換えずに償還させてもよいのですが、LBO投資やプロジェクトファイナンスのように多額の負債を用いる投資では、借換えを前提にした融資が行われることがありますので、私のモデルでも借換えを前提にしてみました。

LBO-返済スケジュール

変動金利の設定方法を知る

もう一点、このモデルではタームローンに変動金利を用いていますので、その部分を説明します。

変動金利は、LIBORやTIBORに対する上乗せ金利の水準を借入時に決めておき、LIBOR等が変動すればトータルの借入金利も変動するというものです。

LIBOR等の将来の変動を正確に予測することはできませんが、Bloomberg等の情報端末を用いれば、LIBORの先物カーブを取得することができますので、この予測値を使うことで、変動金利借入の将来時点における金利水準を推測することができます。

また、借入では、借入金利に対してフロア(=最低水準)を定める場合が多いため、私のモデルでは248行目にフロアを設定しています。なので、実際の借入金利は、249行目で計算したフロア付きLIBOR金利にタームローンAとタームローンBそれぞれの上乗せ金利を足して算出することになります。

これ以外の負債の返済スケジュールはキャッシュ・スイープモデルの解説と同様です。

ステップ7:キャッシュ・スイープのついた負債の返済スケジュールと受取・支払利息を計算する

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コメント(質問への回答はご購入者に限定して対応しております)

  1. 拓也 より:

    PEファンドへの転職を希望しているため、エクセルシート購入し財務モデリングの勉強をしています。

    LBOモデルのEBITDA起点でCFを算出する点で理解が進んでいない為、質問させてください。

    当モデルにおいては、営業CF+投資CFから非支配株主持分の配当と金融収支を引いたものを、「負債元本返済に充当可能なキャッシュフロー」と算出されています。

    EBITDA=当期純利益+法人税-特別利益+支払利息-受取利息+減価償却費
    だとすると、
    営業CFの算出に際し、当期純利益に上式を代入することで、利息の加減が入ってくるのではと考えました。

    私の考え方の誤っている点をご指摘いただけますと幸いです。

    よろしくお願い致します。

    1. 壁道さん より:

      ご記載いただいているEBITDAの計算式は正しいものです。当期純利益は支払利息や受取利息を控除した後の値ですので、ご記載いただいた数式にあるとおり、支払利息と受取利息を当期純利益に戻し入れることでEBITDAからは金利の加減の影響がなくなることになります。なお、ご購入いただいたエクセルシートでは、EBITに減価償却費(DA)を加えることでEBITDAを計算しております。この回答で疑問点が解消されないようでしたら、またご連絡ください。

  2. 初心者モデラー より:

    CFの構築について質問です。
    ”負債返済に充当可能なキャッシュフロー”の計算時に、”非支配株主持分の配当”に加えて”優先株式への配当”も追加する必要があるのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。

    1. 壁道さん より:

      少し説明が不足しておりましたが、資金調達と資金使途欄(59行目以降)に、”優先株(PIK配当)”と記載しており、優先株の配当は現物配当を想定しているため、キャッシュフローには影響しないという前提を置いております。もし優先株の配当が現金配当の場合は、語彙際のとおりCFに追加する必要があります。

      1. 初心者モデラー より:

        ありがとうございます、理解できました。

  3. tak より:

    銀行借り入れ返済後やCP返済後の債務弁済に充当可能なキャッシュの計算式上、期限弁済を加味しなくてよいのでしょうか。式を拝見する限り、余剰資金期限前弁済は加味されているのは認識致しました。

    1. 壁道さん より:

      お世話になっております。返信が遅くなり、申し訳ございません。
      債務弁済に充当可能なキャッシュの計算においては、期限弁済を加味する必要がございます。モデルでは、220行目で負債返済に充当可能なキャッシュフローを計算し、そこから利息を差し引いたものが227行目、さらに期限弁済(243-244行目)を差し引いたものが246行目で計算されております。この246行目の余剰キャッシュを253行目以降の各負債項目の期限前弁済に充当しているので、モデル上の負債返済としては、(1)利息、(2)期限弁済、(3)期限前弁済の順番に充当している形となります。

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