DCFや類似企業比較法、類似取引比較法を用いて企業価値や株式価値を算出した後、その結果を一覧表示する際、フットボールチャートというグラフがよく使われます。バリュエーションのレンジを一覧表示するのに適したこのグラフの簡単な作成方法を解説します。

フットボールチャートの作り方

このページの説明と合わせて、下のエクセルをダウンロードすると、実際にショートカットの使い方を練習できますので、ぜひ使ってください。

なお、ノートPCを使っている方は、Page Up/DownやHome、EndはFunctionキー(Fnと書かれているキー)と同時に押す必要がある場合がありますので、自分のPCの使用をご確認ください。

バリュエーションのアウトプットとしてフットボールチャートが好まれる理由

まずは、フットボールチャートがどういうものか、下図をみてください。

投資銀行のFA(フィナンシャルアドバイザー、財務アドバイザー)業務の中で大きな要素の1つであるバリュエーションは、買収価格の決定に直結する重要な計算である一方、DCFなど各手法にはメリットとデメリットがそれぞれあり、様々な前提等を置いた計算になるので、この買収価格が正解であるという1つの値を示すことはできません。

そこで、投資銀行では常に企業価値や株式価値をレンジで示すことにより、この点に対応しています。

このレンジで示すというのは、顧客の期待をコントロールする上でも非常に重要な意味を持ちます。もし売り手FAが1つの値を適正価格として示した後、買い手との交渉の結果、この適正価格を少し下回る水準で妥結した場合、売り手はFAの交渉力を不満足と捉えるかもしれません。

しかし、M&Aの交渉では売買価格以外にも様々な交渉ポイントがあり、それらを総合的に勘案して買収条件を決定していくので、適正価格というのはその他の条件抜きに決定できるものではありません。

このため、本来は満足の行く条件を勝ち取ったのに、FAが適正価格の見せ方を間違ったために顧客の満足度が下がってしまうということが起こりえます。

なので、顧客にバリュエーションの結果を示すときは、常にレンジで示した方がよく、その際にフットボールチャートは一覧性に優れているので好まれています。

フットボールチャート作成のステップを概観する

それでは、最初にフットボールチャート作成のステップを概観します。

~フットボールチャート作成のステップ~

ステップ1:最低値と最高値の間に「最高値-最低値」の数式を入れたセルを挿入する

ステップ2:表全体を選択して、積み上げ横棒グラフを作成する

ステップ3:凡例を削除する

ステップ4:最低値の内部外側にデータラベルを追加する

ステップ5:最高値の内側軸寄りにデータラベルを追加する

ステップ6:最低値と最高値の棒グラフの塗りつぶしをなくす

ステップ7:軸の書式設定で軸目盛を調節する

ステップ8:縦軸を反転させる

ステップ9:横軸ラベルの位置を「上端/右端」にする

ステップ10:タイトルを変更する

10のステップを1分でできるのかと疑問を持たれる方もいるかもしれませんが、慣れれば1つのステップを数秒でできるようになります。

フットボールチャート作成の具体的ステップ

まずは、フットボールチャートに必要なデータをセットします。私の演習シートではデータがセットされた状態になっていますが、DCFや類似企業比較法、類似取引比較法に基づくバリュエーション結果の最低と最高の値をデータとして使います。

ステップ1では、フットボールチャートのデータの最高と最低の間に1列挿入し、そこに「最高値-最低値」の数式を入力します。列の挿入は、私の「その他のショートカット」に関する演習で紹介しているように、「Ctrl + +(Ctrlと+を同時に押す)」で素早くできます。

ステップ2は、この表全体を選択した状態で、ツールバーの「挿入」→「おすすめグラフ」→「積み上げ横棒」を選択します。グラフの挿入はAlt→n→kのショートカットでもできます。すると、以下のグラフができます。

ステップ3では、グラフ下の凡例を削除します。

ステップ4では、青で表示されている最低値の棒グラフを選択した状態で、ツールバーの「デザイン」→「グラフ要素を追加」→「データラベル」→「内部外側」を選択します。

ステップ5では、グレーで表示されている最高値の棒グラフを選択した状態で、「デザイン」→「グラフ要素を追加」→「データラベル」→「内側軸寄り」を選択します。

ステップ6では、青とグレーの最低と最高の棒グラフの塗りつぶしをなくします。右クリックからデータ系列の書式設定を選択すると、塗りつぶしの設定を行うことができます。

ステップ7では、横軸の最大値と最小値を調整します。横軸を選択した状態で右クリックをすると、軸の書式設定を表示させることができます。

ステップ8では、縦軸を反転させます。グラフの初期設定では、セットしたデータの順序が逆転してしまっているので、反転させることで修正します。縦軸を選択した状態で右クリックから、軸の書式設定を選択し、「軸を反転する」にチェックを入れます。

ステップ9では、横軸の位置を「上端/右端」に修正します。ステップ8で縦軸を反転させたことにより、横軸が上側に表示されてしまったので、横軸を選択した状態で右クリックし、軸の書式設定からラベルの位置を「上端/右端」にします。

ステップ10は、グラフのタイトルを変更します。

これでフットボールチャートの完成です。