財務モデリングでは、一定のルールに基づいて文字の色を使い分けます。FactSetなどのソフトを使用していれば、専用のショートカットによって一瞬で色変換ができるのですが、使用していない方にとって色変換は面倒な作業になるので、そのような方向けに色変更のショートカットを作成する方法をお伝えします。
フォントカラーを一瞬で変更するための簡単なマクロの作り方(VBAを知らなくても作れます)
フォントカラーを変更できるショートカットは、エクセルにはありません。Alt→h→f→cと押して、方向キーを使ってカラーパレットから色を選択することでマウスを使わずに色を変換することは可能ですが、むしろマウスを使った方が速いくらいにキーボードを押す回数が多いものなので、とてもショートカット(=時間短縮)と呼べるものではありません。
そこで今回は、色変換が一瞬でできるようになるマクロの作り方、それを他のエクセルファイルでも有効にするための個人マクロブックの作り方を説明します。
具体的な作成方法に入る前に、財務モデリングで色の使い分けを行う理由を簡単に確認しておきます。
財務モデリングにおける色の使い分け方が重要な理由
財務モデリングを行う人にとって、モデルが正確であることが何よりも大事であることは言うまでもありません。投資銀行では、モデルは作成者とは別の人がチェックすることで、正確性を担保しています。その際、モデル作成のルールを決めることで、チェック作業をより正確に、より容易にしています。
そのルールの1つに、文字の色使いがあります。具体的には、以下のルールが一般的です。
~財務モデリングにおける文字の色使い~
直接入力しているセル:青
同じシート内で完結する数式:黒
別のシートからリンクしているセル:緑
色の使い方は会社によって異なる場合もありますが、最も重要なのは、直接値を入力しているセル(=前提等)と数式を入力しているセルの文字の色を使い分けることです。こうすることで、どのセルが前提でどのセルで計算しているのかがわかるようになります。
手順0:ツールバーに「開発」が表示されているかを確認する
まずは、エクセルのツールバーに「開発」というマクロに関するツールバーが表示されているかを確認します。

もし表示されていない場合は、alt→f→tと順に押して、Excelのオプション画面を開きます。オプション画面左側の「リボンのユーザー設定」を選択して、右側の「開発」にチェックを入れて、右下のOKを押します。

手順1:個人用マクロブックを作成する
個人用マクロブックとは、自分で作成したマクロをいつでも使えるように記録しておくためのものです。これを作成しておくと、エクセル起動時にバックグラウンドでこの個人用マクロブックも起動し、過去に作成したマクロを使用することが可能になります。
個人用マクロブックを作成するには、ツールバーの「開発」→「マクロの記録」(alt→l→r)を選択して、下のマクロの記録ウィンドウを表示します。マクロの保存先を「個人用マクロブック」にした上で、OKをクリックします。

そしたら、適当なセルに1文字なんでもよいので入力して、「記録終了」をクリックします(もともと「マクロの記録」となっていた部分が「記録終了」に変わっています)。

これで個人用マクロブックが作成できました。
手順2:色変更のマクロを書く
エクセルでAlt+F11を押すと、VBA(マクロを記述するウィンドウ)が起動します。
左側に表示されている「VBAPoject (PERSONAL.XLSB)」というのが、個人用マクロブックと呼ばれるものです。個人用マクロブックにぶら下がっている「標準モジュール」の下の「Module1」をダブルクリックすると、以下の右側のようなウィンドウが開きます(書かれているコードは後で消去するので、無視して結構です)。

そのウィンドウに書かれているコードを削除して、以下のコードに書き換えます(そのままコピペでOKです)。
Public Sub ColorBlack()
Selection.Font.Color = vbBlack
End Sub
Public Sub ColorBlue()
Selection.Font.Color = vbBlue
End Sub
Public Sub ColorGreen()
Selection.Font.Color = vbGreen
End Sub
Public Sub ColorRed()
Selection.Font.Color = vbRed
End Sub
コードを書くと、自動的に以下のように区切り線が引かれます。

コードを書いたら、エクセル画面に戻ります。
手順3:コードにショートカットを割り当てる
エクセルの「開発」タブ→「マクロ」(alt→l→pm)を選択すると、先ほど書いた4つの色変換のコードがマクロに登録されています。

ColorBlackを選択した状態で、右側のオプションをクリックすると、以下のオプションウィンドウがでてきますので、好きなショートカットキーを割り当てることができます。

通常のショートカットと混同しないようなショートカットキーを割り当てておくとよいと思います。ここでは、黒なので大文字のKを割り当てたところ、ショートカットキーはCtrl+Shift+kとなりました。

同様に他の色についてもショートカットキーを割り当ててください。参考までに、ここでは黒はK、青はB、緑はG、赤はRを割り当てています。
最後に、エクセルを閉じる際、エクセル自体は保存せずに閉じてよいのですが、その後に以下の画面が表示されますので、個人用マクロブックの変更は保存して閉じてください。

これで、色変換のショートカットが完成しましたので、エクセル使用時にこのショートカットが有効になります。