キャッシュ・スイープモデル作成方法ステップ7を見ていきます。キャッシュ・スイープのついた負債の返済スケジュールでは、余剰キャッシュを弁済順位の高い順に返済に充てていくという流れを、どうやってエクセルの数式で組むのかを解説していきます。
ステップ7:キャッシュ・スイープのついた負債の返済スケジュールと受取・支払利息を計算する
期限弁済を払った後に余った資金を期限前弁済に充てる計算フローを理解する
キャッシュ・スイープのついた負債の返済スケジュールを構築する場合、どの借入に対していくら返済を行うかは、実際には借入条件をきちんと読む必要がありますが、一般的には以下のとおりとなります。
~キャッシュ・スイープ付き借入の返済順位~
- 弁済順位の高い借入の期限弁済
- 弁済順位の低い借入の期限弁済
- 弁済順位の高い借入の期限前弁済
- 弁済順位の低い借入の期限前弁済
つまり、優先順位の高い借入から順に期限弁済を行い、期限弁済が全て終わった後にまだキャッシュが余っていたら、優先順位の高い借入から順に期限前弁済を行うという流れになります。
これをエクセルにどのように組み込んでいくかを次に解説するのですが、私のモデルでは、負債を15つの社債等に分けており、並び順が上にあるほど弁済順位が高いという前提を置いておりますので、ご認識いただければと思います。
期限前弁済に充当可能なキャッシュ・フローの計算方法を理解する
私のモデルでは、負債の返済スケジュールはオペレーティング・モデルと同様にdebtシートにまとめております。まず最初に、期限弁済の金額をinpシートからリンクさせた後、CFシートから負債返済に充当可能なキャッシュを持ってきています。この金額が負債返済可能額のスタートになります。
1つ注意が必要なのは、27行目の期限弁済の数式です。各年の期限弁済の金額であれば、7~20行目の値を合計すればよいのではないかと思われるかもしれませんが、実際にはdebtシートの下の方で計算している各負債の期限弁済金額から取得しています。
なぜinpシートの期限弁済金額ではなく、各負債の計算項目から値を取ってくるかというと、キャッシュ・スイープでは余った資金は期限前弁済に充てていくので、返済が早く進んだ場合、期限弁済前に負債を払い終えている可能性があるためです。7~20行目から期限弁済金額を計算してしまうと、期限前弁済を考慮していない値になるので、27行目の期限弁済金額が本来よりも大きな値になってしまいます。
短期借入金の数式の組み方
短期借入金の数式の組み方はオペレーティング・モデルと変わりませんが、数式のポイントとしては、借入/(返済)の式に、MIIN関数を使用している点です。これは、負債返済に充当可能なキャッシュか、期初残高のどちらか小さい方を選ぶという数式になっているので、負債残高以上に返済することを防ぎ、かつ充当可能なキャッシュ以上に返済することを防ぐ数式になっています。
オペレーティング・モデルとの違いは、41行目に「短期借入金返済後の負債返済に充当可能なキャッシュ」という項目があるということです。これは、全ての期限弁済と短期借入金の期限前弁済を行った後に残っているキャッシュ、つまり短期借入金よりも弁済順位の劣る借入の期限前弁済に使用できるキャッシュということになります。この値は、短期借入金の借入が残っている間はゼロになり、短期借入金を完済して初めてプラスになります。
長期借入金の数式の組み方
長期借入金の数式は、短期借入金にはない期限弁済の金額を入力する項目があります。期限弁済の金額は7~20行目に記載していますが、その値をそのまま持ってきてはいけません。先ほど説明したように、上の期限弁済の金額は期限前弁済を考慮していない元々のスケジュールなので、ここでは期限前弁済を考慮した値になるように数式を組む必要があります。
ここで使用する数式は、短期借入金の返済でも使用したMIN関数になります。MIN関数で、期限弁済金額または期初残高のどちらか小さい方を選ぶという形にすることで、期限前弁済を考慮した値にすることができます。
期限弁済の下にある「余剰資金期限前弁済」の項目でも、MIN関数を使用しています。ここでは、負債返済に充当可能なキャッシュまたは期初残高から期限弁済を引いた残高のどちらか小さい方を選ぶという形にすることで、余剰資金はあるだけ期限前弁済に充てるという式になっています。
最後に借入金残高と利息の集計を行う
これはオペレーティング・モデルと同じですが、全ての負債返済スケジュールを作成した後は、借入金残高と利息の集計を行いましょう。この集計がISやBSとリンクする値になります。